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22年勤めた名古屋の介護付ホームの施設長を2022年3月に「卒業」。組織・現場から離れ、セミリタイヤしました。自由な立場で日々の出来事をつづります。


by 元シロヒゲ施設長
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4月12日 「一輪の『都忘れ』と感謝の気持ち」

 一昨日お亡くなりになったA様、
3年ほど前に他の有料老人ホームに
ご入居されておられましたが、
「中心静脈栄養(IVH)」となりグラードに転居されました。
 
 半年ほどお口からゼリーやとろみの水分を
少しずつ召し上がっていらっしゃいましたが、
その後、基本「IVH」だけで頑張ってこられました。

 発語のない方でしたが、たまに見せていただけるとても柔和な笑顔に、
私をはじめ働くスタッフ達は大きなパワーをいただいていました。

 残念ながら搬送先の病院でお亡くなりになりましたが、
翌日、私がご家族様にご挨拶するため葬儀会館に出向くとスタッフに言うと、
持って行って欲しいと手渡されたのが一輪だけ咲いた「都忘れ」でした。

4月12日 「一輪の『都忘れ』と感謝の気持ち」_f0035001_17414123.jpg


 「ご長女様がお母様が大好きだったご自宅の庭の『都忘れ』を
見せてあげたい」とお部屋に持ってこられましたが、
緊急搬送するまで咲かなかったそうです。
ご本人が入院して不在になった居室でスタッフたちが
「一輪挿し」を陽のあたる南の窓際に置いたりして育て、
亡くなった次の日にやっと咲いたので持って行って欲しいとのことでした。

 一瞬、化粧品の小瓶に挿された知らない人は
ただの野草にしか見えない「都忘れ」を持って行くことに抵抗がありましたが、
スタッフの篤い想いを感じたので持参しました。

 ご家族様は私が出向いた時に役場への手続き等でどなたもいらっしゃらず、
ご本人のご遺体だけが安置されていました。
葬儀会館のスタッフの方の許可を得、枕元に置いて帰らせていただきました。

 今日、告別式に参列させていただくと祭壇にその「都忘れ」が飾ってありました。

 式の最後に喪主ご挨拶で息子様が涙ながらに
お母様が「都忘れ」が大好きだったこと。
長女がホームに持参したが間に合わなかったこと。
亡くなった翌日咲いた花を持ってきてくれたこと。
この花が母の生まれ変わりのような気がすること。
母も大好きな「都忘れ」の香りを楽しみながら
旅立てることをとても嬉しく思う。と語ってくださいました。

 最後にお棺の中にスタッフが作った
ご本人の描かれた絵画のコピーと
「都忘れ」を一輪入れてくださいました。

この時、お持ちして良かったなあ。
スタッフの想いを実現して良かったなあ。と心から思いました。

4月12日 「一輪の『都忘れ』と感謝の気持ち」_f0035001_17511712.jpg


グラード名古屋駅前4階介護スタッフの皆さん、
看護スタッフの皆さん、ご家族様は本当に喜んでいらっしゃいましたよ。
そしてそのような感性のあるスタッフの皆さんに心から感謝します。
ありがとう。


グラード名古屋駅前 施設長 吉村仁志
by grado_nagoya | 2015-04-12 17:51