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22年勤めた名古屋の介護付ホームの施設長を2022年3月に「卒業」。組織・現場から離れ、セミリタイヤしました。自由な立場で日々の出来事をつづります。


by 元シロヒゲ施設長
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2月27日 「認知症の人が安楽死する国」を読んで

またまたすっかりブログをサボっていました。

申し訳ありません。言い訳はしません。

なるべく更新するようにします。

さて、最近「認知症の人が安楽死する国」

―オランダの医療・介護・福祉に学ぶ―

後藤猛著(雲母書房)を読みました。

2月27日 「認知症の人が安楽死する国」を読んで_f0035001_14245921.jpg

以前から私が行う「看取り介護研修」の中でも

先進国の中でほとんど唯一「積極的安楽死」が

制度として認められている国であることを紹介してきました。

筆者は40年ほどオランダに在住し、

精神科医でもあった奥様を看取った経験から

日本の高齢者・障害者福祉のこれからについて

多くの貴重な示唆を綴っておられます。

まず、筆者は第一章「マントルケアとは何か」で

オランダにおける特徴的な「互助」を紹介しています。

人口1640万人ほどのオランダで

なんと100万人近くの家族、友人、近所の人が

介護が必要な高齢者や障害者の介護を

ボランティアとして担当しているそうです。

これを「マントル(外套)ケア」と言い、

マント(外套)のように優しく包み温めるケアとのことのようです。

筆者によればオランダはもともとキリスト教会の影響力が強く、

慈愛や隣人愛の精神が根付いていること。

また堤防の内側の海水面下の低い土地に住んでいる住民全員が

溺れ死なずに大水害にいかに勝ち抜くかを全員が合意するまで

徹底的に話し合うことで生き残るルールを

定めると言う考え方があるそうです。

さらにそのボランティアで足りない部分を

「介護保険」で支えていくというシステムのようです。

「自助」「互助」「共助」「公助」の

「地域包括システム」と似てますよね。

また、全国民がホームドクターを持たなければならないとされ、

ホームドクターの使命はクライアントの治療やケア、

安楽死を含む終末期の看取りケアと同時に

健康増進の啓発、傷病の予防、専門医の紹介を

「クライアント本位」で行うそうです。

オランダにおいて在宅での看取りケアがうまくいっているのは

(在宅での看取りは約33%、病院約33%、施設約33%)

すべての情報がご本人に直接送られて、本人の決定権と意思が

最大限に重んじられる。

つまりご本人のQOLがすべての中心にあるということのようです。

ホームドクターによって死に至る薬を

本人に直接注射する積極的安楽死は

厳しい法律とガイドラインに則って行われ、

その後に行われる厳しい審査によって

「法律の定めた通りに行われた」と

認められた場合のみ合法とされるとのこと。

ちなみに、これだけのボランティア=「互助」があっても

「入院は国を滅ぼす」と在宅中心の医療・介護が進んでいても、

私が調べたところ2012年のオランダの国民負担率は

49.0%とフランス・ドイツに次ぐ高い水準です。

我が国の「地域包括ケアシステム」を成功させるには

「自助」「互助」の拡大はもちろんですが、

「共助」「公助」を保障する国民負担の拡大、

つまり「福祉目的消費税」等も避けられないのではないか・・・。

この本を読んでそう感じました。

2月27日 「認知症の人が安楽死する国」を読んで_f0035001_14275661.gif

吉村仁志


by grado_nagoya | 2017-02-27 14:29